頬がほんのり火照るのを自覚しつつ、私も小声で返す。
「その節は、証人になってくださってありがとうございました」
「いいえ。どう? 新婚生活は」
そういえば、泉さんと前回話したときは契約結婚について悩んでいたっけ。なんとかうまくやれているなと、これまでを振り返って答える。
「あの人、少しだけ変わってきた気がするんですよ。私に合わせてくれるようになったというか」
「へえ、あいつが?」
意外そうに目を丸くする泉さんに、私は微笑んで頷く。
「一緒に食事もとるようになったし、休日に出かけたりもしたし、最近ふたりでいるのが楽しいです。フライト先から電話をかけてきてくれたこともあったんですよ。まあ、からかわれてばかりだし、なにを考えているのかわからないときは多々あるけど」
皆が食事と会話を楽しんでいる中、私はひとり千里さんに思いを馳せて素直な気持ちを口にした。そんな私を、泉さんが穏やかな瞳で見つめている。
「思いのほか幸せそうだね」
微笑ましげに言われて自分の顔がニヤけていたのに気づき、咄嗟に頬に手を当てた。
幸せそう……なのか、私。



