そんな彼は「お疲れ」と短く返して、私の隣にやってきた。柵に気だるげに肘をかけ、私が持っている缶に流し目を向ける。


「ひとりで酒盛りか? 寂しいヤツ」
「付き合ってくださってもいいんですよ」
「遠慮しとく」


 即行で断られるのももちろんわかっていたので、私は笑いをこぼしてひとり缶に口をつけた。

 今日、天澤さんは日帰りだったらしい。彼はいつ帰っているのかもわからないくらい不規則な勤務だし、そもそも帰らない日も多いため、こうして屋上で会うことは滅多にない。

 ふたりでのんびり空を眺めている状況に不思議な気分になりつつ、なにげなく問いかける。


「ここ、天澤さんもたまに来るんですか?」
「ああ……明日から国際線だから眺めておきたくなって。今日の夕焼けは綺麗だし」


 毒気のない口調で答える彼の髪が、ふわりと風になびく。横顔はすっと通った鼻筋や顎のラインが際立って、夕焼けに負けず劣らず綺麗だ。

 空を眺めているときは少し優しい顔になるんだなと、なんだか少し嬉しくなって会話を続ける。