俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


「そこまでしなくていい。離婚しているんだから」


 彼の横顔も声も暗澹としていて、瞬時に〝しまった〟と思った。

 千里さんとお父様は、あまりいい関係ではなかったのかもしれない。私が踏み込んでいい領域ではなかったのだろう。いつの間にか妻気取りになっていた自分に気づき、反省した。

 私はただ利害が一致して一緒にいるだけの女。千里さんがすべてをさらけ出せる相手ではないのだ、勘違いしてはいけない。

 なぜか心の奥がシクシクと痛むのを感じながら、黙って一向に止む気配のない雨の音を耳に入れる。

 車窓に滲む街の明かりを見るともなしに眺めていると、千里さんがおもむろに口を開く。


「……つぐみの両親はどんな人?」


 さっきと変わらず笑みのない彼が、今なにを考えているのか察することはできない。とりあえず質問に答えようと、私は両親の姿を思い浮かべる。


「母は、ひと言で言えば天真爛漫ですね。困るときもあるけど、ずっと少女みたいな可愛らしいところがある人です。父は自分がなにか気になったり、やりたいと思ったら行動しなきゃ気が済まない〝思い立ったが吉日〟ってタイプかな」