俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 彼がこちらを一度も見ないのも妙に引っかかる。私のために会おうとしてくれているわけではなさそうだと、漠然と感じる。

 じゃあなんのためなのかと、別の理由を考えてもまったくわからないし、そもそも私の気にしすぎかもしれない。探る必要はないよね。

 それより、私も千里さんのご家族にお会いしたい。やはり礼儀として、挨拶するのは必須だ。


「千里さんのご両親にもご挨拶させてください。私もスケジュールを……」
「俺の父親は一年前に事故で亡くなった。と言っても、ずいぶん前に離婚してたけど」


 初めて彼の家庭の事情が明かされ、私は口をつぐんだ。ワイパーが動く音が、やけに大きく聞こえる。


「母も足を悪くして車椅子生活だから、今は障害者支援施設に入ってる。俺に迷惑かけたくないっていうのと、ひとりでいるより仲間といたほうが楽しいからって、自分から施設に入ったんだ」


 淡々と語る彼は相変わらず前を向いたままで、「だから、俺のほうは気にしなくていい」と締めくくった。その声には、ほんの少し切なさが加わったように感じる。