俺様パイロットは契約妻を容赦なく溺愛する【極上悪魔なスパダリシリーズ】


 ほんの数秒、軽く触れただけでそれは離れ、瞬きするのも忘れていた私の瞳にいたずらっぽく口角を上げる彼が映る。


「まぬけな奥さん」


 嫌味を感じない甘い声でひと言囁き、自分の座席に戻った彼は平然とシートを倒して仰向けになった。その隣で、ひとり呆気にとられる私は固まったまま。

 ──え? 今、キスされた……よね?

 あまりにも突然かつ一瞬の出来事で、思考が追いつかない。でも、今のは夢なんかじゃない。彼の体温も、唇の柔らかさもしっかり覚えている。

 無意識に唇に指を当てて呆然としている間に上映が始まってしまい、我に返って慌ててシートを倒した。仰向けになると、彼に添い寝しているような体勢のせいで余計に心臓が暴れる。

 千里さん……なんで? なんで、キスなんか。この場の雰囲気? 千里さんはそういうのに流されるようなタイプではなさそうだけれど……。

 脳内に疑問符ばかりが浮かぶ。ちらりと隣を見るも、彼は三百六十度のシアターに映る星空をまっすぐ見つめていて、なにを考えているのかはさっぱり読めない。

 私も真上に目を向け、激しい鼓動をなんとか宥める。リラックスできるはずだったのに彼を意識してしまって全然落ち着けず、ナレーションも頭に入ってこなかった。