音楽が嫌いだ。
感傷に浸らせるような音楽が嫌いだ。
前向きにさせる音楽が嫌いだ。
傷ついた心に寄り添う音楽も、明日の未来を綴る音楽も、夢を描く音楽も大っ嫌いだ。
ラブソングなんて聴いただけで吐き気がする。
この世界が、音楽のない世界だったら、良かったのに。
鼓膜の奥すら震わせるほどの喝采が鳴り響く。
燃えるような夕焼けがスポットライトの光のように照らしている。
集まる視線、視線、視線、見渡す限り歓喜に満ちて煌々と輝いていた。
額から流れ落ちる汗と、張り付いたTシャツと、砂埃の匂い。それらすべてが、瞬きすら忘れさせる。
大きく穴が開いたはずだった、喪失感をすべて塗り替えるような快感が一本の芯のように全身を駆け抜け、眩暈を覚える。
(ああ、)
直視するには痛すぎて、受け止めきるにはあまりに脆すぎた。
視界を遮断するようにきつく目を閉じた。
(心の底から、気持ち悪い)