「……いや、お前らのこと深く知らないオレがとやかく言えることじゃなかったわ。だから今はオレが言えることだけ言っとく。
羽衣坊。恋はね、甘酸っぱくてキレイなことだけじゃねーんだ。それは大人になると余計に。学生時代に甘酸っぱい恋すら経験してこなかったお前にはキツイだろうけどな、でもそれが恋だ」
大人の恋は、痛くて苦しくて、そして汚い。
坂崎さんは言う。
「でもどんなに痛くて苦しくても、その気持ちから逃げることは出来ないし、誤魔化すことも出来ない。どう足掻いてもな」
「逃げられない……」
「羽衣坊は助手席に女がいたから大我への気持ちは諦める?」
「それは……っ」
諦めなきゃいけないと思う。
だって、私は大我にとってただの妹みたいな存在で。
あのキスだって、ちょっと私のこと揶揄っただけで。
今まで考えたこともなかったけど、大我にそういう人がいるのならこの気持ちは消さなきゃいけないし、大我からも離れた方がいい。
一緒にいたら、一度気づいてしまったこの気持ちはきっとどんどん大きくなっていっちゃう。
私だけ見てって、わがまま言いたくなっちゃう。