過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜


ーーアルコールの染み込んだ身体に、10月の夜の風はいつもよりも少し肌寒く感じる。

でも繋がれた手だけは彼から共有された熱のおかげで温かい。


「……っちょっ……!大我っ、どこ行くんですか!」


大我にズルズル引きずられるまま、何とかその大きな背中に声を掛ける。

この状況に、私の頭はとっくにキャパオーバーだ。

「ったく、飲み過ぎんなって言ったのに、なんだその赤い顔は」

ようやく立ち止まった場所は、たまにお昼休憩の時にお弁当を食べに来る、会社からも程近いベンチとブランコしかない小さな公園で。

振り返った大我はちょっと怒った顔で私の頬を両手で挟み込み、ずいっとその顔を寄せて来た。切長の瞳を縁取るまつ毛は長くて、すっと通った鼻筋は今にもわたしの鼻と触れてしまいそう。

そのくらい至近距離に大我の顔があって、どくどくと心拍が早いリズムを刻む。

いや、違う……!これは大我にドキドキしてるんじゃなくて、飲酒した後にリーチの全然違う彼のペースで引っ張られて小走りになっていたから、そのせいでドキドキしているだけだ……!