過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

小、中と学区の違った高木くんは大我のことを知らないはずだけど、その静かな迫力に私からパッと手を離した。


美乃梨ととしはさすがに私の呼んだその名前と、なんとなく昔の面影のある彼の顔で気付いたらしい。

「た、大我って、もしかしてあの大我さんっ⁉︎」

「マジかよ………」

驚く美乃梨ととしを、眉間に皺を寄せ一瞥した大我。

「……ちょっ!羽衣っ!何で大我さんが迎えに来てるのよ……⁉︎」

美乃梨が大我を見上げながら困惑気味にこそっと私に耳打ちする。

「えっと……なんでだろう……」

ごめん、それは私にも分からない……!

「とっ、とりあえず羽衣は帰りな!ねっ?」

「う、うん……っ」

「大我さんって誰?花里っ⁉︎2次会はっ?」

「高木っ、うるさいっ」

美乃梨ととしは、チラチラ私と大我を交互に見ながらもぎゃあぎゃあ言ってる高木くんをむりやり引っ張って、2次会組の集まる方へと向かって行った。

大我は高木くんの手が離れたのと同時に私を抱き抱えていた腕を解き、その代わりに今度は私の手を取る。

「こいつは連れて帰りますが、みなさんはどうぞそのまま楽しんで」

2次会組の集団に向かってそう告げて、大我は普段家でも会社でも絶対見せない、元ヤンとは思えないような極上のスマイルを1つ落とした。

そして私の手を引いたまま、その笑顔に騒つく集団から離れたのだった。