2次会組はこっちねー!と委員長が手を上げている。
なんか引率の先生みたいだな、とぼーっと眺めていたら、花里も行くだろ?と、としと先に出ていた高木くんに腕を取られて、引率の先生もとい委員長のところへ一歩足を踏み出そうとした、その時。
突然後ろからにゅっと腕が伸びて来て、私はあっという間に誰かに引き寄せられ片腕で抱き抱えられてしまった。
ふわっと甘さ控えめのホワイトムスクの香りが鼻腔をくすぐる。
……嗅ぎ慣れたその香りに、振り返らなくても分かってしまった。
え?え?でもなんで……?彼がこんなところにいるはずはない。
ーーだって、今日は会食だって言ってたから。
「お前はこっちだ」
でも頭上から降って来た声にはやっぱり聞き覚えしかない。
……え?ほんもの?
「おい、羽衣、帰るぞ」
「……たっ、大我っ……⁉︎」
もぞもぞとなんとか身を捩って見上げると、私を後ろから抱き抱えていたのはやっぱり大我で。
なんで大我がここにいるのか、なんで私を連れ帰ろうとしているのか、……なんで、名前を呼ばれているのか。
したたかにアルコールを摂取した頭では全然上手く処理出来なくて。
でもそんな混乱する私をよそに彼は、
「こいつは連れて帰ります。なのでその手、離してもらえますか?」
口調は丁寧なのに威圧感のある低い声で高木くんに告げる。



