過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

"いじめっ子から助けてくれたヒーローだったもんな。あれ以上かっこいいひとたちなんて、そりゃあいねーよなぁ"

そう、彼が私の初恋に気付かせてくれたもう1人の親友。

そのいじめっ子だった張本人のくせして何を言う、って思ったけどね、あの時は。

「なに笑ってんだよ?」

「ん?なんでもない。こうしてるとあの頃に戻ったみたいだなあって」

「そうだな」

思わず緩んだ顔の理由を、あながち間違ってもいない理由にすり替えて私がしみじみ呟くと、としはヘッドロックを外しながら優しく眦(まなじり)を下げてふ、と笑う。

「ほんとほんと。高木ととしのじゃれ合い、懐かしいわー」

「「別にじゃれ合ってねーよ」」

半分呆れ気味の声色で言う美乃梨に、食い気味に飛んできた2人の声が見事にハモった。

「うわー、息ぴったり」

その美乃梨のツッコミにとしと高木くんは嫌そうにお互いを見やり、そんな2人を見て私たちは顔を見合わせて笑ってしまった。



そうして楽しい時間はあっという間に過ぎ、ほどなくして貸切のタイムリミットである20時半となった。

ぞろぞろとお店を出ながら、

「2次会行く人ー?」

「2次会どこ行くのー?」

方々で声が飛ぶ。

その声に混じって先に店を出た女子たちの、

「ねえ、あのイケメン誰っ?」

「誰か待ってるのかな?」

「めちゃくちゃカッコ良くない⁉︎」

と言う声が飛び交い、なんだろうと思いながら美乃梨と並んで店を出た。