「花里さんも、だいぶ慣れて来たみたいですね」

「あっ、はいっ、なぎ、中島さんのお陰で……!」

「そうですか。それは良かった」

細身のスーツを着こなした彼の物腰柔らかいその物言いといい、シルバーフレームのブリッジを中指でくい、と持ち上げてふわりと微笑む姿といい、嫌味なくらい品が良くてかっこいい。

はい、と答えながらついまじまじと見てしまった。

「遥、先に車回して来てくれ」


すると彼の後ろから専務がやって来て、相良さんに車のキーを投げて寄越す。

「おはようございます、専務」と渚さんと慌てて挨拶をする。


「ああ、おはよう」


凛々しい顔をこちらへ向けて挨拶を返してくれる。

うん、ネクタイはやっぱりあれで正解だったな。

1人満足して心の中で頷いていると、弧を描いて向かってきたそれを振り返りざま華麗にキャッチした相良さんは、かしこまりました、と一礼して駐車場へ向かって行った。




………そうしてると元ヤンには到底見えないですね、遥くん………。



まあ専務もなんだけど。



相良 遥(サガラ ハルカ)さん。


そう、かつて大我とつるんでいた、あの"遥くん"だ。