過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

「……桃ちゃんは……?」

まだ整い切らない呼吸にその名前を乗せれば、

「……桃……?っはぁぁぁ、なんだお前、桃のこと誤解してたのか……」

私の髪に顔を埋めて心の底から大きなため息を溢す大我。

誤解?本当に誤解なの……?

その言葉が喉元まで出掛かった。

「でもなんで……」

大我が少し身体を離して私の顔を覗き込む。

「……大我と新宿御苑に行った次の日。美容院の帰りにたまたま大我と桃ちゃんが乗った車が信号待ちしてるところに出くわして……。大我が桃ちゃんに向けてた顔を見て、大我は今も桃ちゃんが好きなんだって……」

だから私はただ大我に揶揄われていただけなんだと思ったし、諦めなくちゃいけないと思った。

「……ちょっと待て。"今も"オレが桃を好きだって?オレの記憶の中じゃ、今まで一度も桃をそういう意味で好きだったことはないんだが」

見つめ合う大我の眉間にみるみる皺が寄っていき、今まで私たちを包んでいた甘ったるい空気が霧散した。