過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

「ははっ!ほんと昔っから分かりやすいな、お前」

……こんなど迫力の大我を前にけらけらと笑えるのは、たぶん坂崎さんと、後は遥くんくらいだと思う。

「うるせえ。もう羽衣には指一本触れさせねえ」

そう言って大我は背中にしがみついていた私の方へくるりと身体を向けて、今度は大我が私を正面から、まるで大切なものを包み込むかのようにぎゅっと抱き締めた。

ちょっ……⁉︎なに⁉︎

「……へえ?それはどうして?」

坂崎さんの顔は見えないけれど、どこか揶揄うように声が弾んでいるのが分かる。

「……こいつに触れていいのはオレだけなんだよ」

私を抱き締める大我の腕が一瞬緩んだと思ったら顎をくい、と持ち上げられ、男の色気を漂わせた、それでいてどこか余裕のない眼差しに見下ろされる。

「……たい……が……っ?」

その瞬間噛み付くようなキスをお見舞いされて、呼んだ名前は大我に吸い込まれていく。

荒々しく濃厚で、キスなんてついこの間経験したばかりの私にも分かるくらい、それはなんだかさっきの眼差し同様余裕のないキスのように感じて。

オレのものだって言われてるような気がして。

私もその時ばかりは桃ちゃんのこと、気にする余裕がなかった。