過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

「し、知っているなら教えて下さい……」

坂崎さんから急に滲み出した色気にちょっと怯みながらも、何とか目は逸らさずにそう答えると、

「……新しい恋だよ羽衣坊。その気持ちを消すには、新しい恋で上書きしちゃえばいい」

男の人なのにキレイで妖艶な笑みを浮かべながら私の顔を覗き込んでくる。

「……新しい、恋……?」

「そう、新しい恋。大我じゃない誰かと付き合って、忘れさせてもらうんだ。すぐには無理でも、徐々にさ」

大我じゃない誰かと……?

そうしたら忘れられる?この辛い気持ちも、苦しい気持ちも、そのうちなくなってくれる?

どうしようもなく大我を求めてしまう自分とも、さよならできる……?

「……羽衣坊、その相手、オレじゃダメ?」

「……え?」

「オレが、大我のこと忘れさせてやる。だから、オレと付き合わない?」

予期せぬ言葉に、今度は私が目を見開く番だった。

「……えっ⁉︎」

熱のこもった瞳に捉えられ、言葉の意味を混乱する頭で何とか理解した時、私の体温が一気に上がって行くのが分かった。

「いやっ、えっ⁉︎なんで……っ⁉︎」

「今無性に羽衣坊にキスしたい」

全然答えになっていない気がするのは私だけ………⁉︎

「まずはキスから上書きする?大我にされたのはどんなの?軽いヤツ?それともディープなヤツ?」

そう言って坂崎さんが頬に添えていた手を私の顎に滑らせる。