過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

「そうそう。美味いもんいっぱい食って笑って、とりあえずヤなこと全部忘れちまえ」

そう言って坂崎さんが頬杖をつきながらまたふんわりと包み込むような笑顔を見せるから。

優しい声でそんなことを言ってくれるから。

「………どうしたら大我のこと、忘れられますか………?」

その顔に、その声に、するりと言葉が出てしまった。

「羽衣坊?」

坂崎さんが少し驚いたように目を見開くけれど、一度出てしまった言葉は止まらない。

「大我を好きなこの気持ちは、どうしたらなくなりますか……っ?」

言いながらも好きが溢れてきてどうしようもなくて。

逃げることも誤魔化すことも閉じ込めることもできなかったこの気持ちを、なくすことはもう無理なんじゃないかと心のどこかでは分かっている。

それでももし方法があるのなら……。

「………知りたい?」

すると私の言葉に静かに耳を傾けてくれていた坂崎さんの瞳に、妖しげな光が宿る。

こくりと頷く私に、

「本当に?」

試すような視線でそう聞きながら、なぜか向かいの席から私の隣へ移動して来た坂崎さんは、私の頬にそっと手を添える。