延藤くんが屈んで、私に目線を合わせる。

少し近づいた顔に、私は一歩退(しりぞ)いた。


「伊月っていうよりも、俺は真桜ちゃんに興味があるんだよね」

「わ、私?」

「言ったじゃん。俺と付き合わない? って」

「……え?」

「真桜ちゃん、いつまで経っても返事くれないんだもん」

「でも、だって……」


あれは、冗談だったんでしょ?

それに今も、とても本気で言っているようには見えない。