教室の扉が開いて、そこから顔を見せたのは伊月くん。

両耳で音楽が奏でていたから、扉が開く音が聞こえなくて、私は気づくのが少し遅れてしまった。


伊月くんが驚いたような表情をしているのは、きっと私が持っている音楽プレーヤーのせい。


よりによって、本人に……!


「蕪木、それ俺の?」

「わ、ご、ごめんなさい! 机に置いてあって、気になって、あの……!」


慌てて停止ボタンを押して、イヤホンごと手のひらに乗せる。


「ごめんなさい!」


そして、すれ違いざまに音楽プレーヤーを渡し、もう一度謝って、逃げるように飛び出してしまった。