「大丈夫、俺も見てないから」


後頭部に、大きな手のひらの感触がある。

大好きな声は、耳のすぐそばから聞こえた。


あれ?
……え?

私、伊月くんの胸の中にいる……!?


よしよしと、泣きじゃくる子どもをあやすように、手のひらが撫でている。


びっくりして、一瞬のうちに涙が引っ込んでしまった。

すれ違う人たちのことも、少しも気にならない。