伊月くんに手を引かれて走って、立ち止まる頃には、私たちは知らない場所にいた。

先ほどのような、店が立ち並ぶ賑やかなところではなく、人足も穏やかな住宅街。


「ごめん、真桜、無理やり引っ張ってきて」

「う、ううん、全然、そんな……」


ずっと私の前を歩いていた伊月くんが、振り返る。

久しぶりに、ちゃんと顔を見た。

久しぶりに、私の目を見てくれた。

久しぶりに……。


涙がポロッとこぼれて、慌てて手の甲で拭う。


「ごっ、ごめん、なんでもないの。伊月くんが、久しぶりに私の名前呼んでくれたから、それで……」