周りも見ずに、廊下を駆け抜けて、自分の教室に戻る。

時間も時間だし、きっと誰もいないだろうと思っていたのに、クラスメイトの女子が三人、窓際で話をしていた。

あそこ、私の席……。

この三人とは、仲のいいグループも違う。

行きづらいな。

涙目を手でサッと隠して、さっさと自分の席からかばんだけ取って、帰ろうとした、その時。


「あ、来た。ねえ、ちょっといい?」


かばんを取るために下を向いていたほんの短時間で、三人が私を囲むように立っていた。


「あんたさぁ、伊月くんに馴れ馴れしくするの、やめてくれない?」

「どんな手使ったのか知らないけど、ウザすぎ」

「彼女でもないくせに」


……いつかは、こんな日が来るような気がしていた。

整った顔立ちの彼は、女子にとても人気があって、(はた)から見れば唯一仲のいい女子は、彼女でもなんでもない私。