延藤くんは、前のめり気味になった私を、ポカーンとした表情で見返す。

だけどよく見えないのは、視界が涙でにじんでいるせい。


「え、いや、真桜ちゃん、俺の今の話聞いてた?」

「聞いてたよ! だから、ずるいって言ってるの!」

「ずる……、……え?」


延藤くんの唇が、「え」の形で固まる。

そして、何度かパチパチとまばたきをして、


「……っぷ。はは! 真桜ちゃん、やば! どこに怒ってんの? 涙目だし。怒りポイント、くだらなすぎ」


私には見せたことがないほどの笑顔と笑い声で、お腹を抱え始めた。


「く、くだらなくないよ!」

「いや、マジで意味分かんないから。なに、声が分かる才能って」

「だって、私もその力が欲しかった……」

「ははっ、バトル漫画みたいなこと言ってるし。真桜ちゃんって、なんていうか……あれだよね。伊月ガチ勢だよね」

「が、ガチ勢……?」