「高校生男子が、そんなに高い声出るわけないだろ」

「元々は蓮、あんたが頼んできたことでしょうが。ほら、もう一回」

今井先生が、伊月くんを下の名前で呼んで……、

「そっちだって、さっきから音程外しまくりなくせに」

「なんだってぇー?」

伊月くんと先生が親しげに話をして、私は弾かれるようにその場から逃げ出した。


伊月くんは、先生でも生徒でも、女の人とは喋らない。

……はずだった。


伊月くんの、ナデシコの声に恋をしているような表情を思い出す。


『真桜しか知らない』


勘違いしてた。

私、伊月くんに一番近い女の子は、自分だと思っていた。