「ナデシコの歌声は確かにすごいけど、俺だって素質はあるはずだし、すぐに追いつける。なんだったら、追い越せるとも思ってた 」


延藤くんが手のひらで包んでいる缶が、パキッと歪む音が鳴る。


「でもさ、そんな甘くないんだよな。所詮、クラスメイトよりも少し上手いだけの俺なんか、ネットの世界では埋もれて。同い年のナデシコは、どんどん有名になっていった」

「……」


なんだか少し、分かってきた気がする。

延藤くんが、伊月くんに抱いている感情の正体が。


延藤くんも、伊月くんと同じなんだ。

歌が好きで、自分以外のみんなに聴いて欲しくて、動画を投稿し始めたひとり。