缶に口を付けて、ひと口。

よく冷えていて、おいしい。


隣の延藤くんは、緑茶の缶を開けている。

さすがに、二杯連続でメロンソーダは飲まないのか。


「……」

「……」


ふたり無言の中、子どもたちのはしゃぐ声だけが辺りに響いている。


伊月くん、今頃は今井先生と一緒なのかな。

去年、ふたりで音楽室にいるところを見て、恋人同士だって誤解しちゃったんだっけ。

懐かしいな……。

本当は、発生練習をしていただけだったのに。

伊月くんは、昔の、ナデシコの声を取り戻したくて、ただ頑張っていただけなのに。

なのに、なんで……。


「……延藤くんは」

「なに?」

「延藤くんは、伊月くんに傷ついて欲しいの?」


どうしてこの人は、頑張っている人の邪魔をしたいんだろう。