どうして今井先生と?

今井先生は、音楽教師でもないのに……。

声をかけられない。

ふたりきりの世界が完成されているように見えてしまって。


「もう、違うよ。ここはね、これくらいの高さで」


今井先生がグランドピアノでナデシコの曲を演奏しながら、伊月くんに話しかける。


「“ 君が現れた 僕の前に 春だった”」


そして、先生が歌詞を口にする。

綺麗な高音。

馴染みのあるメロディ。

この、声は……。