「真桜は、知らなくて当然だよ。俺が、一方的に真桜を見つけたってだけだから」

「……?」


ますます分からなくて、首をかしげる。

それを見て、伊月くんは笑った。


「中二の冬にさ、俺がもう、ナデシコの高い声を完全に出せなくなって悩んでた時。たまたま入ったCDショップに、真桜がいたんだ」

「う、うん……?」


話を聞いても、全く記憶にない。

CDショップに入ったことなんてたくさんあるし、誰かと出会った覚えもない。


「視聴コーナーに、ナデシコのCDもあった。俺はその時、もう戻らない過去の自分の声を聴くのが辛くて、見るのも嫌で、下を向いて素通りしようとしたんだけど……」