「うん、音楽は好き。音楽っていうか、私はただ、ナデシコのファンってだけだから」


アイスが完全に溶けて、パイに染み込んでしまった部分も、これはこれでしっとりしてて甘さが増していて、おいしい。


「普通、曲を聴きながら口ずさんだりってするでしょ? でも、ナデシコの曲だけはちゃんと聴きたいから、自分の声が邪魔だと思っちゃって」


伊月くんとカラオケに行くとか、そういう贅沢なことはもちろん憧れではあるけれど、
その声で生歌なんて聴いてしまったら、自分がどうなるか分からなくて、怖くもある。


私がフルーツパイを平らげてしまいそうになるというのに、伊月くんの手は二口目くらいで止まったまま。


もしかして、あまり好きじゃなかったのに、無理して半分こしてくれたのかな。