でも、ふたりきりのデートとかじゃなかっただけ、まだ良かったと思ったほうがいいのかな。

私のことを好きでもなんでもない延藤くんが、ふたりきりのデートを提案するとは思えないけど。

本当は、この誘いだって、私が参加するのを望んでいなかったっぽいし。


「そういえば、今ってどこに向かってるの?」

「え? 真桜ちゃん、誰にも聞かされなかったの? かわいそ」

「……」


いや、うん。
別にいいけど。

さっきから、お互いヒソヒソと小さな声で会話をしているから、周りにいる延藤くんの友達にこれを聞かせられないのが、若干悔しい。