大して伸ばしてもいない爪が、手のひらにくい込んで痛い。

うるさすぎる心臓の音が、ナデシコの歌をかき消しそうになる。


「付き合ってるってこと自体は……、嘘じゃなくて。でも、お互いに好きなわけじゃないっていうか、えっと……」


胸が苦しい。

伊月くんの顔が見れない。


「ごめんなさい。理由は話せなくて……、でも」


伊月くん、今どんな顔をしてるんだろう。


「私が好きな人は、延藤くんじゃないって、伊月くんにだけは、どうしても誤解されたくなくて」