伊月くんはもう、休み時間のたびに、私に片耳のイヤホンを貸してくれることはない。

静かにひとりで教室を出ていって、その先は私も知らない。


昨日までが、嘘みたい。

ふたりで同じ音を聴いて、屋上で並んで座って……。

全部、夢を見ていたみたいに、遠い出来事になってしまった。


天井を見上げて、出かけた涙を無理やり戻す。


「真桜ー、お昼だよ」


朝以来の成美ちゃんの声が聞こえて、視線を向けた。

それだけで、すごく安心する。