「あ、おはよー、真桜」

「お、おはよう……」


扉を開いて、すぐそばにいた成美ちゃんにあいさつをして、恐る恐る後ろの窓際に目をやる。

伊月くん、もう来てる……。


姿を確認したとたん、心臓が変に騒ぎ出した。

逃げ出しそうな気持ちを(ふる)い立たせて、自分の席に向かった。


「い、伊月くん。おはよう……!」


いつものようにイヤホンを耳に当てている伊月くんは、誰かが隣に来たことには気づいたけど、私が何を言ったのかは聞こえなかったらしい。

片方のイヤホンだけを外して、「え?」と返した。