何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「お前らは外に出てろ。」

京司は渋る宰相を何とか説得して、この扉の前まで来ていた。

「なぜです?」

しかし京司は、宰相や兵士が一緒にこの扉の中に入る事を、強く拒んだ。

「いいじゃねーかー。初対面なんだし。仲良くするから!ほら、武器だって持ってない。」

京司はそう言って、ヘラヘラ笑いながら、簡単にその扉を開け、中へと入って行った。
宰相は、もうこうなっては彼に反抗する事は無駄だと諦め、そこに立ち尽くしたまま、彼の背中を見送るしかなかった。

ギー、バタン
そして重苦しい扉が勢いよく閉まった。

思惑通りなんとかここまでやって来た京司は、少し薄暗いその部屋の奥へと足を進める。
だだっ広い部屋だが、家具は少ししかない。

(なんだか殺風景な部屋だ。)

しかもカーテンは閉めきられたままで、昼間だというのに、いやに暗い。
明かりといえば、ベッドのそばに置いてある小さなランプのみ。
その明かりを頼りに、京司はベッドの上に座るその人物を見つけた。

「何の用?天師教?」

青い目の青年が、京司に冷たくそう言った。
あの時とは、明らかに雰囲気が違う。

「京司でいいよ。」

そう言って京司は、何食わぬ顔で、ベットの横にあった椅子に腰かけた。

「京司?何それ?君に名前なんてあったの?」

その部屋の主の青が眉間にしわを寄せた。
知らないのは、当たり前。天使教に名前などない。

「ほら、天師教って呼びにくいだろう。だから、あだ名みたいなもん。」
「…。」

(やっぱりこいつは、こういう奴なんだ…。)

青が静かに目を伏せた。