あれは、短大に入ってすぐの頃。



友達に誘われるままに、『Rondo』で体験入店をした。

自分には向いてないと思ったが、それでも、あれよ、あれよ、という間に、その友達と一緒に働くことになってしまった。


で、偶然にも、ボーイをやっていたトシと再会したのだ。


『再会』といっても、高校時代はクラスも違ったし、接点もなかったため、正直、声を掛けられてもすぐにはわからなかった。

なのに、やはり地元が同じだということが大きく、話しているうちに意気投合して、気付けば体を繋ぐ関係になってしまい、今に至っている感じ。



一緒に入店した友達が短大を辞め、他店に移ってしまっても、だからさくらは何だかんだで『Rondo』にいるのだろうけど。



仕事を終えて帰宅し、シャワーを浴びて着替えた頃、トシがやってきた。



トシは多分、さくらの学校の講義スケジュールを把握しているのだと思う。

大抵いつも、次の日の講義が昼からだったりする時にしか、やってこないから。


変なやつだなと、いつも思う。



「お疲れー」


言いながら、トシは勝手知ったる様子で、さくらの部屋の冷蔵庫からビールの缶を取り出し、ぐびぐびと飲んでいた。


ずうずうしい。

少し呆れながらも、トシがいつもあまりにも美味しそうにビールを飲んでいるから、さくらは怒るに怒れないまま。



「今日さ、(しずか)さんの客が悪酔いして帰り際にゲロ吐いて」

「うっそ」

「で、俺、ゲロの処理だぜ? もうマジでありえないよ。思い出しただけでこっちまで気持ち悪くなるし」

「ちょっと、ちょっと。そんな話、私に聞かせないでよ。汚いじゃない」

「失礼な。俺が今日、頑張った話なのに、汚いとは」


へらへらと笑うトシ。

まったく悪気がないところが腹立たしくもあるのだが。