灯くんは「正直ホッとした」と言った後に、ちょっぴり悪い顔を向けてきた。
「音桜、そんなに俺のこと好きだったんだ」
「あ、当たり前でしょ!」
「ふーん」
何か企んでいる顔だ。
「なら、今度は音桜からしてよ」
「な、何を?」
「わかってるくせに」
そう言って私の下唇ギリギリを親指で撫でる灯くんは、私が今まで見てきたどの灯くんでもない。
自分からするのはまた全然違くて恥ずかしいけれど。
大好きな灯くんが、私からのキスを求めているなんてこんな嬉しいことなんてないから。
「じ、じゃあ、目をつぶってください」
「ん」
素直に目をつぶった彼が可愛くて、ゆっくりと唇を近づけたら。
チュッとわずかに触れた瞬間、逃がさないと言わんばかりに灯くんの方から更に押し付けてきて。
それから何度も角度を変えて私の知らない大人なキスをしてくるから、息が続かなくて彼の胸板を叩く。
「っ、はっ、ちょっと、タイム……」
「もう終わり?先にキスしてっていったの音桜なのに」
「言ったけどっ、灯くん熱あるし、今日はもう……」
これ以上熱が上がったら大変だから。
「大丈夫。今度は俺がちゃんと看病してあげるから」
なんて、耳元でそう甘くささやかれる。
そう言う意味でいったんじゃないんだけど……と心の中でツッコみながら、
彼の目の上にキスをした。
end



