「その子から離れてくれない?今すぐ」

っ!?

その聞き覚えのある声に、まさかと思い目を開ける。

いつも聞いている不機嫌な声とは比べものにならないぐらいの低くて冷たい声。

ゆっくりと顔を上げて声のした方を振り向けば、冷ややかなその瞳が私の目の前にいる男を見ていた。

嘘でしょ……。

なんで、どうして、灯くんがこんなところにいるの。

「……っ、津三木!」

男の人が驚きながらその名を口にしたので、私に見えている彼が幻覚じゃないんだとわかる。

「なっ、なんだよ。津三木に関係ないだろ。こいつが急に俺に突っかかってきたから……」

「見てたよ全部」

「……はぁ?」

「彼女はさっきの子をお前から守っただけ。いいかげんさっさとその汚い手離して視界から消えて」

あの灯くんがそんなセリフを吐くなんて思わなくてそのやりとりを黙って見ていることしかできない。