オレの心もざわざわと揺れだした。始まりの鐘がどこからか聴こえてきそうだ。


「……えっかっ?!」


じいっと見つめられていたが、いきなりはっとして真っ黒の瞳を見開いた彼女に若干驚く。どうかしたのだろうか。


「えっ、え?!かっ、上条…碧空くん?!」


驚きを隠せない表情でオレを指さす。


「……はい」


諦めたように笑うと、ええっ!!ともう一度小さく叫ばれた。

やっぱり、驚くよな。

なんか、少しだけ申し訳ない気分だ。


「えっ!花菜、その人って上条碧空?!えーっやっば!!」


横からダーッと走ってきた女の子が"かな"と呼ばれた彼女の背中をバシッと叩いた。地味に痛そう…。

「う、うん。私も、すごいびっくりしちゃった……」

「えってか上条碧空、ここの制服着てる?!え、何、同じ高校ー?!えー!!あっそういえば同い年だっけ?!」


走ってきた女の子は、まあまあ背が高いように感じる。元気な子って感じで……"かな"と呼ばれた子とは対照的だと思った。


「えー……っと、上条碧空、です」


苦笑しつつ、やんわりと笑う。彼女たちがきゃあきゃあ騒いでいる間に、周りがザワザワしだしたし。なるべく静かにしてほしい……というのは、ただのオレの我儘だろうか。