「行ってきます!」


ぐいっとドアを開くと、目の前には果てしなく広がる青空があった。んーっと伸びをしてもう一度、行ってきます、と小さく呟く。

今日もまた世界はびっくりするほど美しいし、優しい色に包まれてる。この世界が好きだなあと思う。


「あのぉ……」

「え?」

「あの、ハンカチ、落としましたか…?えっと、そこに、落ちてて……周りにあなたしかいませんし……」


今日から通う高校を前に、女の子に声をかけられた。小さな声で、弱々しいし頼りない雰囲気を醸し出してる。

そんな印象の子。


「あ、ほんとだ。ありがとう」


できるだけ警戒されないように、ふんわりと笑う。すると彼女はぽんっと頬を桃色に染めた。二重で真っ黒の瞳がオレを捉える。

瞬間、ざあっと風が吹いた。まるで、何かを祝福するかのように。