ダイニングテーブルには焼きたてのグラタンと、冷蔵庫に入れておいたサラダが並んでいた。駿太郎さんが夕飯のセッティングをしてくれたようだ。

「ただいま。芽衣子も食べてないみたいだから、グラタン、一緒に焼いちゃったよ。ちょっと遅いけど、一緒に食べよう」

駿太郎さんはにこっと笑う。
その笑顔に救われた気持ちになり、身体の奥底から安心が湧きあがってくる。

「暖人、昼間たくさん眠ってくれたんだけど、その分夕方からぐずぐずで~」
「だと思ったよ。きみも寝ちゃったんだね。寝かせておこうか悩んだけど、少しきみと喋りたいなって。我儘でごめんね」

可愛いことを言ってくれる。
席に着く前に背中から駿太郎さんの身体にがばっと抱きついた。私だって駿太郎さんと喋りたかった。夫婦ふたりの時間を満喫したかった。
同じことを考えてくれていたなんて。

「嬉しい。駿太郎さん、私の望むこと全部してくれるんだもの」

駿太郎さんが私の手をさすり、それから向き直って抱き締め直してくれた。

「だって芽衣子のことが好きだから。好きな人には気分よく暮らしてほしいし」
「甘やかしすぎ。私、駿太郎さんにどんどん甘えちゃうよ」

見上げると、駿太郎さんの優しいブラウンの瞳が見えた。