「芽衣子、実は俺もかなり動揺していたんだ。きみに何かあったら、本当に俺は生きていけないよ」

そう言って、駿太郎さんが私の首筋に顔を埋める。その姿は、さっきまでの男らしさとは違い、どこか甘えた子どものよう。

「格好よくなんてない。きみが大事過ぎて、不安でどうしようもなかったんだ。臆病なんだよ、俺」
「私だって、駿太郎さんを失えないから、同じくらい臆病です」

大きなお腹がつっかえるけれど、精一杯腕を伸ばして彼の背に回す。

「私と赤ちゃんを守ってくれてありがとう。駿太郎さんは最高の旦那様でパパです」

私が安心できるのは彼の腕の中だから、駿太郎さんが安心できるのも私の腕の中であってほしい。お互いを安心できる住処みたいにして、ずっとずっと一緒にいたい。

「愛してるよ、芽衣子」
「私も愛してます」

お見合いをして一年と少し。私たちは、赤ちゃんを育みながら恋も育ててきたのだと思う。だって、こんなに愛しいという気持ちが溢れてくる。幸せ過ぎて胸が苦しい。
涼やかな秋の夜風が吹いた。
私は駿太郎さんの温度を心地よく感じながら、目を閉じていた。