その仕草には明らかな嫌悪が宿っていた。自分でも驚いた。駿太郎さんに触れられるのを手酷く拒絶したのだから。
駿太郎さんが絶句する。私は戸惑い視線をさまよわせ、結局うつむいてしまった。彼を押し返した手は膝の上で硬く拳を握る。

「ごめん」

駿太郎さんが慌てたように謝った。

「具合が悪いのに、急に触られたら嫌だったね。配慮が足りなかった。本当にすまない」
「いえ……ごめんなさい」

一生懸命、悪くなった空気を戻そうとしてくれる駿太郎さんは、明らかに傷ついた顔をしていた。私に拒否されて、どうしようもなく悲しい顔をしていた。

「ごめんなさい。もう少し眠ります」
「ああ、そうするといいよ。俺はリビングにいるから、何かあったら呼んで」

駿太郎さんが出て行くと、寝室は元の暗闇に戻った。ベッドに身体を沈み込ませる。吐き気よりも、胸が苦しくてつらい。

駿太郎さんが私を裏切り続けているなんて考えたくもない。それなのに、心はどんどん頑なになっていく。
駿太郎さんに触れられて、あんな態度を取ってしまうなんて。
このままじゃいけない。私たちは赤ちゃんを迎えるために、ちゃんと向き合わなければいけない。
その結果、関係がどうなろうとも。