エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~

翌日、俺と芽衣子は家から近い大学病院の産婦人科を訪れていた。初診ということもあり、かなり待つことになった。何度か検査などで芽衣子は呼ばれたが、ふたりで診察室に入ったのは病院到着から二時間近く経ってからだった。

「日永芽衣子さんですね。はい、妊娠しています。おめでとうございます」

さらりと告げる女医は慣れた様子で超音波写真を差し出してくる。

「現在六週目ですね。まだよく見えないと思いますけど、ここにいるのが赤ちゃんです」

指し示されたところは確かに何かあるように見えるが、それが赤ん坊だということは言われなければわからないだろう。まだまだものすごく小さいようだ。

診察を一緒に受ければ、気持ちが変わるかとも思ったが、俺の心は相変わらず実感がないままぼうっとしている。
横の芽衣子を見ると、超音波写真を手に目を輝かせ、女医の話に何度も相槌を打ちながら聞き入っていた。
そんな彼女の姿にまたしても罪悪感のような気持ちが湧いてくる。

その後、母子手帳のもらい方や次回の妊婦健診、分娩予約などについて助産師から説明があり、診察は終わった。

「帰り、少し散歩しませんか?」

病院を出ると、芽衣子が誘ってくる。せっかくふたりとも休みだし、病院では座りっぱなしで少し疲れた。自宅マンションまで歩くことにした。ぐるりと遠回りすれば徒歩二十分くらいだろうか。