「芽衣子さん、めちゃくちゃ人気者でしたよ。ミスコンに推薦されるくらい。本人、学業を理由に辞退してましたけど、出てたら絶対彼女が優勝でした。とにかくモテるのに、誰とも付き合わなくてそれがまた男子の夢を膨らませるっていうか」
芽衣子が美人で可愛いのは誰より知っているし、モテていたという話は、「それはそうだろう」と若干ドヤ顔をしてしまいそうになる俺だが、複数の男が芽衣子を狙っていたというのは少々そわそわしてしまう案件だ。過去のことと言っても、夫の立場からすれば気になる。
「三年のとき、俺の友達が真剣に告白したんですよ。そうしたら、忘れられない人がいるから誰とも付き合わないって断られちゃったんです」
はたと俺は止まった。忘れられない人。それは芽衣子に?
聞いたこともない話だ。
「それで、芽衣子さんの友達づてに聞いたんですけど、高校時代からずっと同じ言葉で告白を断ってるそうですね。すごく大事な人だった。忘れられないから誰とも付き合えないって」
本当に初耳だ。心臓が早くなっていることに気づく。
芽衣子に、忘れられない男がいた?
「でも、そんな彼女の心を癒して射止めたのが日永さんなんですね! いや~、正直、日永さんなら仕方ないっていうか~。男として勝てるとこないっすもん。日永さんくらい仕事できて、イケメンだったら、俺たちのアイドルが選んでも許せるっていうか~」
「……おべっか使っても、許さないぞ。こことこことここ。直して」
「あは、おべっかじゃないっすよ。でも、了解でーす」
滋田は明るく言って、自分のデスクに戻っていった。
俺の心臓だけが妙な音で鳴り響いている。
俺は芽衣子からそんな話を聞いたことがない。
芽衣子が美人で可愛いのは誰より知っているし、モテていたという話は、「それはそうだろう」と若干ドヤ顔をしてしまいそうになる俺だが、複数の男が芽衣子を狙っていたというのは少々そわそわしてしまう案件だ。過去のことと言っても、夫の立場からすれば気になる。
「三年のとき、俺の友達が真剣に告白したんですよ。そうしたら、忘れられない人がいるから誰とも付き合わないって断られちゃったんです」
はたと俺は止まった。忘れられない人。それは芽衣子に?
聞いたこともない話だ。
「それで、芽衣子さんの友達づてに聞いたんですけど、高校時代からずっと同じ言葉で告白を断ってるそうですね。すごく大事な人だった。忘れられないから誰とも付き合えないって」
本当に初耳だ。心臓が早くなっていることに気づく。
芽衣子に、忘れられない男がいた?
「でも、そんな彼女の心を癒して射止めたのが日永さんなんですね! いや~、正直、日永さんなら仕方ないっていうか~。男として勝てるとこないっすもん。日永さんくらい仕事できて、イケメンだったら、俺たちのアイドルが選んでも許せるっていうか~」
「……おべっか使っても、許さないぞ。こことこことここ。直して」
「あは、おべっかじゃないっすよ。でも、了解でーす」
滋田は明るく言って、自分のデスクに戻っていった。
俺の心臓だけが妙な音で鳴り響いている。
俺は芽衣子からそんな話を聞いたことがない。



