エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~

「嬉しくは、ないですか?」
「え……?」
「赤ちゃん……、まだ早かったかなって……」

その言葉に、俺はいよいよ慌てた。
そうじゃない。彼女を悲しませたかったわけじゃないのだ。
だけど、俺の態度は彼女をひどく傷つけるものだったのだ。

「そんなことない。すごく嬉しいよ。だいたい、赤ちゃんがほしいから避妊をしなかったんだ。きみだって同じ気持ちだっただろう?」

俺としてはかなりまくしたてた口調になってしまった。
芽衣子がおそるおそるといった雰囲気で頷く。

「ごめん、芽衣子。不安にさせたね。まだ、親になる実感が湧かなくて……。変な態度を取ってしまったみたいで。……きみさえよければ、明日は俺も有休をとるから一緒に病院に行ってもいいかい?」

芽衣子の表情にようやく安堵が見えた。頷いて微笑んでくれる。

「ありがとう、駿太郎さん。それじゃあ、明日、一緒に来てもらっちゃおうかな」
「すごく楽しみだよ」
「まだ、確定じゃないから、そんなに楽しみにしちゃ駄目ですよ」

そう言う芽衣子も、嬉しそうに笑っていた。

よかった。ごまかした言葉だけれど、謝りたい気持ちは本物だし、それは芽衣子に伝わったようだ。
心のもやが晴れなくても、彼女を傷つけることだけはあってはならない。
彼女の心の在処がべつにあったとして、それでも今は俺の妻なのだ。俺が守らなければ。
お腹の子も、彼女も。