エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~

この女性は駿太郎さんが新婚だって知らないのかしら。夜中にメッセージを送ったらポップアップの通知を妻が見るかもって思わないのかしら。
そもそも、この通知を私に見せるのが目的?

考えてみれば通知は表示を消せる。それをしないということは、駿太郎さんもバレていいと思っているの? 
駿太郎さんは私が女性の陰を気にしても問題ないの?
こうして毎晩情熱的に抱いておけば、満足するのが妻だと思っているのだろうか。

私が最初にこの女性の存在に気づいたのは婚約中のことだった。
結婚式の打ち合わせでホテルに出かけた際、プランナーとの約束の時間より少し早く到着してしまったのだ。ふたりでラウンジで待っているとき、彼のスマホが振動した。
『どうぞ、確認してください』と私が促すと、彼はメッセージアプリを開いているようだった。その時、彼のもう一台のスマホが音をたてて着信を知らせた。職場から貸与されている仕事用のスマホだ。
彼は一瞬、私物のスマホを無造作にテーブルに置いた。そうして仕事用のスマホに出たのだ。
画面はまだ明るく、そこにはメッセージアプリのトーク画面が表示されていた。写真が見えた。

艶やかな女性の写真だった。年の頃は三十代半ばくらいだろうか。
栗色のロングヘアを華やかにカールさせ、真っ赤な口紅がよく似合うはっきりした顔立ちをしていた。自撮りのような角度だ。