エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~

その晩も、駿太郎さんは私を優しく抱いてくれた。
優しく……というのは正直ちょっとわからない。私は駿太郎さん以外の男性経験がないし、彼と愛を交わしているときは、時々怖いと思うときがある。
普段は理知的な彼が、野生的な瞳に代わり、荒い息をつきながら私に触れ、征服していく。けして痛くはないし、心地よさと感じたことのない感覚に声も溢れてしまう。だけど、物静かな普段の彼とのギャップに翻弄されてしまうのだ。

私の名を呼ぶ声の艶っぽさにはいつもドキドキしてしまう。それと同時に、彼から愛の言葉を聞いたことはほとんどないことにも気づく。
「可愛い」とか「好きだよ」とか、そんな言葉を男性はベッドの中で言うものではないのかしら。わからないし、質問するアテもない。駿太郎さんは私の名前を呼ぶだけ。あとは「痛くない?」なんて気遣う言葉があるくらい。

だから、私はこの情熱的な行為が愛なのか気遣いなのか欲なのか、判別がつかないでいる。

ともかくこの夜、行為を終えると駿太郎さんは眠ってしまった。私もうとうととしていたけれど、不意に暗い室内に光を感じて目が覚めた。
見れば、サイドボードに置かれた駿太郎さんのスマホが光っている。メッセージではないようだ。宮間万美という名前と『写真が送信されました』の表示。
こんな時間にまでメッセージと写真を送ってくるなんて、どういう神経なのだろう。