「…あの、わざわざすみませんでした。ありがとうございました。」



頭を下げて、鍵を受け取るために手のひらを出したのだけれど、



「……。」



男が差し出したのは、鍵を掴んでいる右手ではなく、何も持っていない方の左手で。



その左手には今、なぜかあたしの右手がしっかり握られている。



そうして、「部屋番号!!」と半ば無理やりあたしから聞き出した部屋番号を頼りに、あたしの部屋に向かっているところで。



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