「紫乃様、行ってしまわれましたね」 「そうだな」 「紫乃様が帰られたら不思議と風も止みはじめましたね。 あら・・・、時親様、簀子に・・・。 これは紫乃様のお忘れ物でしょうか・・・? 古今和歌集、紫乃様のお手蹟のようですね」 『忘れなむと思ふ心のつくからに ありしよりけにまづぞ恋しき』