「気持ちはありがたいが、任務が始まればお前たち新人はそれどころじゃないぞ？」

その言葉は正解だった。任務は一つ終われば次々と現れ、自由に調べ物をする時間などない。戦いに慣れたツヤがいてくれるとはいえ、妖も強い。一つの任務を終えるのに短くても数時間はかかるのだ。それでも、イヅナはツヤのあの時の顔を忘れていなかった。

（この仕事に慣れたら、絶対に調べなきゃ！）

女性のことを話す時、ツヤはとても穏やかで、でも儚く今にも消えてしまいそうな雰囲気だった。いつもは強い存在だからこそ、力になってあげたいと思ってしまう。

薙刀を手にし、イヅナは今日もツヤたちと共に任務へと向かうのだった。



過去のことをぼんやり思い出していたイヅナだったが、何者かの気配を感じて振り返る。するとそこには、牛の頭をしているが体は人間という怪物がいた。ミノタウロスである。

その姿を目にした時、イヅナの顔は真っ青になる。ミノタウロスは少年少女を喰う妖だ。そして筋肉質な巨大な体をし、その手に斧を持っていて強いことがわかるからである。