あやかし戦記 葛藤の炎

イヅナが提案すると、今度は二人が黙る番だった。保護するなど勝手な行動だろう。しかし、あんなにも優しく笑う彼が恐ろしい人狼だとわかっていても殺すという選択を選べなのだ。アレス騎士団の団員として正しくない判断だとしても……。

「ちょっと、三人で何話してるの!?」

突然声をかけられ、イヅナたちは肩をびくりと震わせる。振り向けば、キャッチボールを終えて汗を拭きながらソフィアがイヅナたちを睨んでいた。

「私たちから、ニコラス先生を奪うつもり?先生は私たちの先生よ。あなたたちには渡さないから!」

「ちょっとソフィア」

「やめなよ〜」

水筒の水を飲んでいたカイルとマルクルが慌てて止めに入るものの、イヅナたちを見つめるその目には「先生を取らないで!」と書かれている。

(前も思ったけど、この三人はとてもニコラスさんのことを慕っているのね)

他人をこんなにも慕ったことがイヅナにはない。そのため、三人が少し羨ましく感じる。それと同時に、心の中に様々な感情を宿した炎が生まれ、心の中でぶつかり合うのだ。